新選組と渋沢栄一
今週のお題「一気読みした漫画」
4月にやっていたDMMブックスの70%オフセールで大人買いした漫画が複数ある。
その一つが、風光るだ。
少女漫画で、新選組モノ。主人公は少女だ。
ちゃんと成立するのか?と思われるかもしれない。が、している。
数ある新選組モノの中でも考証がかなりしっかりしていて、歴史や文化の勉強になる。
去年作者がコロナ禍の中オフ会を開いたとかで炎上していたのを知って悲しくなってしまったが、作品は作品だ。
今読んでみると、少々痛々しく感じる部分もあるが、作品の素晴らしさを毀損するものではない。
10〜30代、若い隊士たちの青春が幕末を駆け抜けていた。そのきらめきを閉じ込めたような物語だ。
私がこの漫画を初めて手に取ったのは高校生の時で、小遣いが少なくアルバイトも禁止だったので、古本屋に通い詰めて集めていた。
中学生のときにPEACE MAKERや大河ドラマ新選組!、銀魂、燃えよ剣、等々に触れ、判官贔屓というか、彼らの熱い気持ちとそれに反した悲しい結末に感じるものがあり、新選組を愛していた私は、この漫画に出会い、すぐに夢中になった。
しかし大学に進学し、就職し、他の漫画やコンテンツにもはまり、なかなか買い集められないまま、この物語については時々思い出す程度になっていた。
最近になってこの作品が完結したことを知り、そして、DMMブックスのセールがあり、この機を逃すわけにはいかないと大人買いしたのであった。
買ってからしばらく経って、ようやく先日一気読みした。十数年前と変わらない感動がそこにあった。
彼らを突き動かしたものは、新時代への情熱ももちろんあったはずだが、武士への憧れだ。
著名な隊士である沖田総司、永倉新八、原田左之助らは武士の家系だが、新選組ツートップの近藤勇、土方歳三は武士ではない。彼らは農民である。農民といっても、裕福な育ちだ。剣の稽古をする程度の余裕があった。ただ、剣技をいくら磨いても、武士にはなれない。
風光るを読んでいて、ふと思い出したのが、今年の大河ドラマである。渋沢栄一も、裕福な農家から、幕臣となった。近藤勇や土方歳三と似ているのだ。
それぞれの結末は、知っての通りだ。
誰に仕えたかが命運を分けてしまったといえばそうなのかもしれないが、渋沢栄一のように、近藤勇や土方歳三が名を残していた未来も、あったのだと思う。
近藤と土方の最期を思うと、苦しくなる。二人が亡くなったのは、それぞれ満34歳のときである。自分が30代になってみると、なんと若いのか、と愕然とする。
6/27放送の、『第20回 篤太夫、青天の霹靂』では、土方が渋沢栄一の警護につき、両者が会話をするシーンがあった。
慶喜は将軍となり、その家来である栄一も幕臣だ。かたや新選組は会津藩お預かりとはいえ浪人身分。土方にとっては羨望の対象であっただろう。
ともに武州の豪農の出の二人は打ち解け、また会おうと誓い合う。この先の展開を知ってしまっているのをつらく感じた。二人が、新しい日本を作っていくこともできたかもしれないのだ。
ゴールデンカムイでは、土方歳三が箱館戦争を生き延びたことになっているが、近藤勇が処刑されず、生き延びた世界や、戊辰戦争が起きず、新選組が新政府に組み込まれる世界もどこかにあるのだろう。そんな物語も見てみたい。
長州や薩摩を中心とした、明治新政府を全否定はしない。彼らには彼らの努力があったし、私はそこから繋がる社会に生きている。
ただ、近藤や土方がいる明治はどんな時代だっただろう?と思いを馳せてしまうのだ。